「なぜ起訴猶予になったのか?」を聞きに検察庁へ行ってきました

朝日新聞 神田さんや岡崎市立中央図書館事件等 議論と検証のまとめの杉谷さんの取材では「私が罪を認めたので起訴猶予になった」とのことです。

朝日新聞 神田記者による検察への取材より

不起訴とした理由は「強い意図は証拠上認定できなかった。どれくらい業務に支障があったかという点でも、検索システムの障害になったのは比較的短時間だった。業務妨害罪としてそれほど悪質なものではない。本人も反省している。」

”嫌疑不十分”でなく”起訴猶予”とした理由は「本人が罪を認めているから。」

杉谷氏の愛知県警への取材より

「攻撃ではない、と認識していながら、嫌疑なしではなく起訴猶予処分となった理由はなんですか」 との問いに対して、愛知県警は「故意が認められたということで、警察としてはそう判断している」

Librahackメモの通り、自分では罪を認めたつもりはありませんでした。故意も否定したつもりでした。「本人が罪を認めた」と認定されることは、私が今後ビジネスを行っていくときに困ります。そこで、その理由だけでもはっきりさせたいと思い、「なぜ起訴猶予になったのか?」を聞きに検察庁へ行ってきました。

検察庁では事件を担当した検察官の事務官に対応していただきました。事務官というのは、検察官が読み上げた内容をタイプして調書を作る人です。分かりやすく言えば、ドラマ「HERO」の松たか子さんです。検察官は大変お忙しいようで、事務官が別室にいる検察官に説明を受けて私の質問に回答するという形でした。

以下、聞いてきたことです。

なぜ故意を認定したのか?

故意を認定した理由はこういうことのようです。

コンピュータに詳しい技術者なので、リクエストを大量に送りつけたら、図書館のサーバに影響が出ることを予想できた。事実、まったく予想しなかった訳ではなく、少しは影響が出ることを予想していたはずだ。それなのに、リクエストを大量に送りつけたので、「故意があった」ものと判断した。

また、「なぜ嫌疑不十分ではなく、起訴猶予としたか?」との問いには、「影響が出ることをまったく予想しなかった訳ではなかったから」とのことでした。
さらに、「それは過失になりませんか?」との問いにも同様に、「影響が出ることをまったく予想しなかった訳ではなかったから、過失ではなく故意が認定される」とのことでした。
ちなみに、逮捕前に警察でとられた自白調書はまったく影響していないそうです。

検察官に認めてもらうにはどうすればよかったのか?

私は法律を知らず、刑事事件における「故意性」「過失罰」など重要なことの意味を理解していませんでした。

今思えば、取り調べの時に行うべきだったのは、故意の否定です。故意を否定するために最も受け入れやすい話をすべきでした。
具体的には、まず検察官が誤解している「大量に」の認識を改めてもらう、つまり検察官の「大量に」の基準が適切でないことを指摘し、この「大量に」はWebの世界では常識的なものだと認識を合わせておく必要がありました。その上で、図書館のサーバに影響が出ることを予想できなかったと認めてもらうことでした。

ところが、故意の否定を明確な目標にせず、図書館のサーバに不具合があることだけを主張してしまったため、故意がなかったことを認めてもらえなかったようです。

相手側に不具合があることを示しても、法律の考え方では、因果関係を否定することにはならないと、ネットの議論(質問回答1回答2)を通して知りました。

2010.12.17